DiGRA JAPAN定例会200607
○ゲームは総合芸術・技術
工学、数学、美学、文学、音楽、心理学、雑学
1962 MIT SpaceWar
1971 コンピュータスペース ノーラン・ブッシュネル (C)NUTTING ASSOCIATES
1972 PONG (C)ATARI => ノーラン・ブッシュネルが設立
電子回路で構成、開発に1年
1976 ブレイクアウト ATARI
1978 スペースインベーダー タイトー
1980 パックマン ナムコ 「80年代のミッキーマウス」
○開発コンセプト
殺伐としたゲーム場→女性客の取り込み
「食べる」という動詞から発案
可愛らしさ→カラフルなモンスター
操作を簡単に→4方向の移動だけで済ませる
企画にないアイデアを取り入れる
モンスターのアルゴリズム
「数珠繋ぎでなく、パックマンが囲まれるように動いてほしい」
4匹のモンスターにそれぞれ別の行動アルゴリズムを与えた
赤 :追う(パックマン本体目標)
ピンク :先回りする(パックマンの口先32ドット目標)
シアン :点対称位置目標
オレンジ:ランダム
社長の赤一色命令
製品版の1/2のスピード
米国TVアニメ→視聴率56%
○レースゲームの歴史
1974 ATARI GRAN TRAK10 俯瞰視点
1974 タイトー スピードレース 俯瞰視点スクロール
1976 ATARI NIGHT DRIVER 一人称3D風
1976 ナムコ F-1 エレメカ一人称視点 点光源投影
(1978 ナムコ ジービー)
1982 ナムコ ポールポジション 一人称擬似3D CPU16bitx2 8bitx1
(1983 リブルラブル)
1988 ウィニングラン 68000+6809 1000ポリゴン 60フレーム
リッジレーサー 4000ポリゴン + テクスチャ
周辺応用技術
LCD、プラズマ、有機EL
カメラ取り込み画像処理
音声認識、音声合成
各種センサー技術
HMD、VR技術
裸眼立体視
AI
ODYSSEY
ATARI2600
エレメカ '55〜'80
ビデオゲーム '80〜
家庭用TVゲーム '83〜
○特許の流れ
初期〜中期
電子回路を含んだハードウェア依存型
中期〜後期
ゲームハードがコンピュータ化して標準化
リアルタイム性の実現の特許(ソフトウェア)
これからの特許
通信(ネットワーク管理、課金システム)
周辺応用技術+感情認識技術
ディスプレイ万能主義→手触り感覚のゲーム
○基礎研究は共同体で
消費財のコンテンツ制作に特化する傾向
基礎研究を個々のメーカーが単独で行う余裕が持てない(人材、時間、予算、設備)
↓
産官学共同研究を望む
学会での論文・研究発表を具体的な成果物(商品化)にする必要が大きい。
○ゲーム学として
芸術的側面
ビジュアル・サウンド表現としての芸術
ストーリー・シナリオ表現としての文学
ゲーム表現を体系化する
人間研究
面白いと思う心のメカニズム
楽しいを良しとする遊びの研究
○遊び
人間は遊ぶ存在である
遊びの4つの分類(ホモ・ルーデンス)
遊びの動機
人間の欲求
FUN FIRST
○人材育成の側面
ビジュアルデザインのスキル
デッサン力、立体造形、CGソフト
プログラミング技術
数学、物理
プランニング手法(コンセプトワーク)
ディレクション・プロデュース
「価値」の創造とコミュニケーション
プロジェクト運営技術の不足?
○遊びの効用・効果
ゲームには、楽しく持続させる力がある
教育、医療、福祉、訓練等への活用
社会的役割の広がり
子どもからシニア、お年寄りまで
健常者だけのゲームから多くの方へ
○最後に
ゲームはあらゆる題材に拡張する
ゲームを知ることは、人間を知ること
ゲームは作り手の人生観に支配的
質疑応答.
パックマンについて.
- パックマンの製作チーム規模は?
- ロジック→ソフトウェアの時期だったが開発言語などは?
- 開発期間は?
回答:
- 企画&ビジュアル、プログラム、サウンド、ボード開発、筐体電気設計、筐体機械設計、筐体デザイン
- アセンブラ
- 1年3ヶ月
プロップサイクルについて.
足で漕ぐというインターフェースが斬新だったが、社内の評価や開発秘話などお聞かせ願いたい。
評判は良かった。だが、操作が複雑すぎて初心者や女性がほとんどプレイできなかった。
足で漕ぐ+上下+左右の3つは多すぎた
(開発の人間は慣れてしまった)
ひょう
他にヒットしなかったゲームは?.
ボスコニアン(調整不足)
リブルラブル(レバーを2本というのが厳しい)
「初心者」の重要性.
(株式会社ソーム田代)
テストプレイで「いい初心者」というのがいるのではないか?
開発者はどうしても慣れてしまう。バランス調整をどうしてもそれでやってしまう。
だから社内的には他のチームの人などで「プレイしない人」を確保しておく。
モニターという形で子供を使うこともあるが、大半はやっていない。
相手のことを考えるデザイナーが必要。
新:太鼓の達人は最初評価が低かったと聞いているが?.
最初は一人用だった。
開発陣は自信満々だったが、営業はダメ出し→ナムコの音ゲーは失敗していた
しかしロケテの評価は抜群に良かった
稼動筐体は進化が止まっている?.
アーケードに行くとカードなどを使ったものはあるが、稼動筐体は進化が止まっている。これ以上の進化はないのか?
R360などのような挑戦的なものはあった。
ゲームの基本は「思い通りに動かせること」
稼動筐体は最初の驚きはあるが、思い通りに動かす部分でデメリットになる
ロケーションの中でのスペース効率、筐体価格という経済的な側面もある。
非ディスプレイなゲームのイメージ.
具体的にイメージがない(苦笑
ディスプレイとリアルタイム.
リアルタイム性を高くすると、なにかを犠牲にする必要がある。
画像がそれほどショボくならない工夫のあたりが特許になる。
パックマンの速度を変えるとどうなるのか、という研究.
「ゲームの処方箋」のイベントでの発表
早くすると上手い人は満足するが、普通の人は不満度が上がる。遅くしても不満度が上がる。
相対的なスピードと絶対的なスピードの調整という2つのスピードがある。
開発中にどこでミスしやすいかを調べるときに、検証効率を上げるためにスピードを上げたら、そっちの方が面白かった。偶然の産物。
ハイテク志向は本当に正しいと思っているか?.
ハードの機能を全部使う必要はない。中身次第。
シンプルなルールで作れば初心者でも対応できるものが作れる。
DSが優れているのは、「ペン入力」という入りやすいインターフェース。だから大人、それも年配の人が買う。
「機能を使わなければ損だ」という貧乏思考がどうしても働いていた。
DSの成功でブレーキがかかった。
遠藤:
脳トレはこっそりハイテクだと思う。漢字認識とか。
ハードメーカーは可能性を追うためにいろいろ入れる。
何を使うかはソフトウェアのさじかげん。
老人ホーム用のワニワニパニックや太鼓の達人に特殊な設定はされているか?.
ハード的にはグリップにラバーを巻く、高さを低くするなどしている。
太鼓の達人:曲が民謡だったり、スピードが違ったり。
パックマンハッタンについてどう考えているか?.
フィールドで遊べるアイテムが出回りはじめてる:GPS搭載携帯電話とか
それを使っていろんな遊びができるかもしれない。
「動詞的に考える」をアメリカ人に説明するのが難しい.
日本語の形態、文化に依存した考え方で、英語圏の人間にはどうにも伝わらない。
塊魂なら「転がす」のような端的な表現が向こうの人にはできない。
"Japan tuneing" 独特の難易度調整
アメリカはあれだけ映画が作れる国なんだから、できないわけはないと思う。
最近のアメリカゲームはリアルな方向ばかりに向かっている。ATARIにはできていた。
最近の傾向についてどう思う?.
これ以上技術とかいらない。
安くしてほしい。7000円の映画とか本とかって買えないでしょ? 1980〜2980円ぐらいが理想的。
キャラクター性について.
世界で受け入れられるためにはキャラクターにある種の抽象性が必要だと思うがそのへんに意見はあるか
記号性、と言ったほうがいいかも。
「動詞的」と言ったが、その「動詞」が絵や記号で表現されているのがよい。
日常の中のサインなどが参考になるのではないかと思う。
ゲームを作るためのプロジェクトのメンバーに必要な素養.
クリエイターになるのであれば、自分のテーマ・ベクトルを持っているべき。
多くの学生は先生の言うことを鵜呑みにしてしまう。自分自身で考えて答えを出せることが大事。
スペシャリストがまず必要。多岐にわたってスキルを磨こうとすると共倒れになる。
第二第三は余裕があれば、でいい。
昔はT字型がよいと言われていたが、H型・2本ぐらい持っていることが必要だと思う。
○東京工芸大でのカリキュラム
- ゲームビジュアルデザイン
- ゲームプログラム
- ゲーム企画
共通部分としては「ゲームとは何か?」ということを徹底的に学ばせたい
3/4年次には専門分野の技術を。
○他にこれから大事になりそうな分野のイメージはあるか?
「ゲーム学」こそが必要。それを包含するものとして「遊び学」があるのではないか。
○モノづくりの喜び
若い人に情熱が薄いような気がする。根性論ではないが、モチベートというものはやはりあると思う。
努力を見せることを格好悪いとする風潮がありそう。
情報が多すぎて、その海の中でもがいている、という感がある。問題を先送りにする傾向があるのかも。