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Feel! NitendoDS

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2004/12/29 GameDeep vol.9掲載、2006/11/09 Web版掲載

Feel! NintendoDS / 中田吉法.

 12月23日についカッとなってNintendoDSを購入。

 可能性のあるマシンだとは思っていたけれど、実機を持ってそのポテンシャルが想像以上だったことに気付かされた。そんなわけで、GameDeep的視点を交えてともかくぐだぐだ語ってみる、のだ。

まず持ってみた。.

 大きい。

 大きい大きいとは聞いていたが、確かに大きい。これ、ホントに持ち歩くのか? というようなサイズ。しかしこれは比較対象------GBASPからの乗り換えなのだ------が悪い。よくよく考えてみれば初代GBも無印GBAもおおむねこんな大きさだ。してみると、任天堂的には伝統の大きさにしてきたということだろう。その同じサイズでソフトを2本(GBA用とDS用がそれぞれ1つ)差したまま持ち歩けて、ピクチャットもついている。と考えると、ずいぶん盛り沢山だ。

 次に展開して、プレイするときの形で持ってみた。思い出したのはドリームキャストのコントローラー。しかしDCコントローラ + ビジュアルメモリに比べると情報量は圧倒的だ、と妙なところに技術の進歩を感じてみる。
 左右の操作部の離れぶりとか、任天堂コントローラデザイン文脈からは外れたSelect/Startボタンの位置に戸惑ったりとかしつつ、それではいよいよ……

電源を入れてみた。.

 ポポンポポンポポンポポン……、とサラウンド感を誇示するような起動音。

 の、音がいい! 携帯ゲーム機の内蔵スピーカーとしては異様に臨場感を感じる。ワイドな本体にそんなに大きくない液晶2枚、の結果余ったスペースをステレオスピーカーに割り当てた成果だろうか。上画面にはロゴ、一緒に下画面には注意書き。同時表示情報量の多さをとりあえず実感。で、誇らしげな「続けるには画面をタッチしてください」の文字。

それじゃあタッチ!.

 とりあえずは設定画面に。一応はキーでも操作できるけど、せっかくだからタッチパネルで入力していく。ここでスピーカーの意味を知る。タッチパネルはボタンに比べるとどうしてもインタラクション感が弱い。そこでさっきのスピーカー、というわけだ。
 タッチするたびに鳴る音の小気味よさが、操作しているという実感を演出してくれる。タッチパネル+内蔵ステレオスピーカーという筋の通ったコンセプト演出にこっちはもうメロメロだ。
 設定が終わると一旦電源OFF。再度電源を入れるとメニュー画面。この時点でまだソフトは差してないので、設定画面へGo! で、チクタクと鳴る時計の音に芸の細かさを痛感、そしてまた感動。

でもって数日後。.

 実は当初はDS用ソフトを買う気がなかった(本体だけGBASPから乗り換えのつもりで買った)のだが、新しいオモチャのあまりのワクワク感に耐えられなくなった。そんなわけで初期ラインナップを見て、一番コンセプチュアルだと直感した「大合奏! バンドブラザーズ」を購入。
 下画面で回っているディスクをこすってみるとスクラッチができる! と気付いて興奮したり、音ゲーにしてはあまりに行き過ぎた楽器ぶりに目を回したり。うああー、セッションしてみてーとか思いながら悶々と練習を続けておりますのこと。

そんなこんなで語ってみる。.

 ピクトチャットについては本領はぜんぜんだけど本号表紙でわけわかんない利用をした、ということであとはまだワイヤレス通信機能を試せていないわけだけれど敢えてトータルの感想とか展望とかを。

 とにかくデバイスとしてのワクワク感がすごい。
 始めてファミコンを触ったときの興奮、とかいうと年齢が微妙にバレるか。あれをもう一度ゲーム機から味わえるとは正直思ってなかった。

 スタンドアロンのゲーム機として見た場合は、やっぱりタッチパネルだ。いわば無限に拡張可能なコントローラーデバイス。それを活かすために全てがデザインされているという印象だ。

 文脈としては、Nintendo64のデザインを思い出す。

 任天堂のゲーム機の意志がなにより見えるのはコントローラーだと思う。

 64は、徹底的に攻めの思考でデザインされたハードだった。異様な形でしかも大きなコントローラーの中でも、その中央に配置されその存在感と操作感とで己を誇示していたアナログスティックが象徴的だ。あそこには「時代はアナログ入力だ!」という強烈なメッセージがあった。

 後継機のGameCubeではコントローラーは「ヘンな形」路線は受け継ぎつつも見た目としてはずいぶん無難化、むしろ64に比べ後退した印象を受ける。LRがボタンからトリガーになったとか、十字キーとアナログスティックの(デザイン上の)重みの入れ換えとか、実
は大胆な変更も入っているが、そのへんを感じさせない「こっそり感」がGameCubeのデザインとしてのコンセプトにはあると思う。

 というような文脈でもってDSを眺めてみると、やっぱりタッチパネル、だろう。そこを基準に考えるとSelect/Startの位置変更も納得できる。大きくなったから押しやすい位置に、などという無難な変更じゃあない。あのアグレッシブな64でさえ中央にあったスター
トボタンを動かすというのは、デザインの継承性をかなり重視している任天堂にとっては大英断だ。「中央はタッチパネルの空間」。それを決定的に印象づけるために、真ん中に余計なボタンは置きたくなかったのではないだろうか。
 これまでの任天堂携帯ハードのコントローラーデザインの文脈には、明らかに「FC→GB」「SFC→GBA」という対応関係があった。だがDSは、性能的にも似通ったいわば対応ハードであるはずの64に対する見た目の類似性を投げ捨て、これまで据置きハードでしか試さ
なかったようなアグレッシブなデザインを行った。
 DSはパッと見、派手さのないソリッドでシンプルなデザインであるように見える。しかし、コントローラーデザインという観点で捉えれば、歴代任天堂ハードの中でも最もアグレッシブな意志を持っていると断言できる。機能・性能面で考えれば、DSはGBAの後継だと
言うのが妥当かもしれない。しかし、任天堂のゲーム機デザインに置いて大きなファクターを占めるコントローラーについて考察するならば、むしろDSはGameCubeの後継機、あるいはGameCubeと同列に並ぶ別進化形だ。

 追加装備なしに通信機能を持っている、ピクトチャットの標準内蔵、なんてあたりからも、任天堂がDSにかける「本気度」が見えてくる。きっと次には、GBAケーブルに相当するGameCube用の「DSアダプタ」か、DSからの操作を事実上の前提とした新型の据置きハード、という展開が待っているだろう。同時に、「据置き」と「携帯」というハードの置かれている地位ごと逆転させてしまうような仕掛けを打ってくる可能性だってある。というか、その可能性の方が高いぐらいだ。

「ゲーム機とはこういうものだ」という概念すら打ち砕く可能性。
 DSってのは、そういうハードだ。良くも悪くも保守的だったGameCubeとは正反対、なのだろう。FC-GB-GBASPラインにつながるシンプルな皮の下に、バーチャルボーイや64のデザインに連なるアグレッシブさを秘めている。しかもこれまでで一番獰猛な本性を秘めているんじゃないか、なんて思えるほどの、だ。

 任天堂はウソつきじゃなかった。
 DSは確かに「まったく新しいゲーム機」なのだ。きっとぼくらの常識をブッ飛ばしてくれる。そんなワクワク感を共有するために、Touch!、するのだ!

Touch、と言えば。.

 最後に、蛇足。でも一番重要。
 かくもベタ褒めのDSだけど、じつはでっかい不満を感じた点がある。
 それは、あのなんとも中途半端なタッチストラップのことだ。
 これほど夢中にさせるゲーム機に、あのストラップは不似合いだ。それならいっそ、タッチパネルが手の脂でべとべとに汚れることなんて覚悟して、液晶画面クリーナーを添付してくれればよかったのに。そこだけがでっかい不満だ。
 せめて今からでもどうです、任天堂さん?


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