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悪食的映像食記:1

vol.4掲載


 毎回の放送のたびに、「今回は話が(進みすぎた or 進まなかった)なあ」という言葉を同居人と交わすのが、東京に在住する我々の水曜日深夜の慣わしである。

 まがりなりにもSF者を自認する私の目には、「宇宙のステルヴィア」は、なんとも言い難いものだと映る。ぶっちゃけ「トップをねらえ!」でしょ、というのが早い時期での見立て。その見立ては概ね当たった。学園もの、キャラクターものとしてのアニメを繰り広げながら、バックグラウンドではファースト・コンタクトものがゆっくり進行していく。
 それが大転換した、と思ったのは9、10話のグレート・ミッション編だった。これで話は一気にSFに、と私は(歪んだ)期待を抱いたものだ。が、実際にはそれ以降も学園ものが適当にぶり返す展開が続いた。

 ステルヴィアには話の軸が二つある。
 一つはキャラクターものとしての軸。正しく学園ものとしての、友情やら恋愛やら嫉妬やらを絡めた人間模様の話。もう一つはSFとしての軸。未知の知的生命体(?)とのファーストコンタクトものとしての話。
 こういう二つの軸を持つ話としては、まんま「トップをねらえ!」がそうだった。だがしかし、「トップをねらえ!」はもう少し無軌道というか、ライブ感覚的に話が進んでいた。キャラクター軸とSF軸は、丁度クロスフェードするように入れ替わり、気がつくとSFになってしまっていた。

 ところがステルヴィアでは、いつまでたっても両者が並行して進んでいく。なんともどっちつかずで、しかし美味しいとこ取りでバランスのいい展開は、佐藤竜男の味だろう。佐藤竜男監督の作品を見るのは「機動戦艦ナデシコ」以来だが、その情報密度は相変わらず、凄い。テンポ良く画面を変え、目先を変え、情報をこれでもかと投げてよこし、しかもあまり消化不良を起こさない。

 あまりにそれが上手なことに、不満を憶えないでもない。
 比較的ライトに話を進め、それでいてきちんと演出する。あまり情念というものを見せないまま、心地よい映像作品を流していく。
 くせがないわけでないけれど、毒気はいまいち足りないのだろう。そんな毒気の足りなさに、不満を憶える私は------悪食だったりするのだろうか。


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